城北法律事務所 ニュース No.78(2018.8.1)
目次
- Page 2
- 1 今こそ、憲法改正よりも東アジアの平和構築を
- 2 国民投票法の問題点
- Page 3
- 1 約款規定の新設
- 2 売主と請負人の契約不適合責任が新たに規定されました
- 3 敷金ルールの明文化
- 4 消滅時効規定の見直し
- 5 保証ルールの見直し
- 6 変動利率
- Page 4
- 1 1964年の片平キャンパス
- Page 5
- 1 ネットで誹謗中傷
- Page 6
- 1 暑中お見舞い申し上げます 2018年 盛夏
- Page 7
- 1 第一生命株主代表訴訟
- 2 原発被害に取り組む全国の原発訴訟について
- 3 建設アスベスト訴訟 ~東京高裁で2連勝! 舞台は最高裁へ~
- Page 8
- 1 憲法委員会公演企画 『変わるべきは何か〜憲法9条と北朝鮮』
- 2 新事務局長紹介
法律相談
ネットで誹謗中傷
弁護士 田村 優介
【質 問】
Twitterに、私の実名を上げて事実無根の悪口を書かれています。書いているのは以前からの知人ですが、仲がこじれてしまい、このようなことになってしまいました。つぶやきを消してもらいたいのですが、有効な方法はあるでしょうか。
【回 答】
このようなご相談が最近急増しています。従来は、出版やマスメディアなどの手段を用いない限り、大々的に他者の名誉を毀損するということはできず、一般の方が名誉毀損の被害者になるというのはややレアケースでしたが、インターネットの幅広い普及に伴って、ネット上に誹謗中傷などの名誉毀損表現がなされてしまい、お困りの個人、事業者の方が増えています。
1 相手がわかっている場合
誹謗中傷を書き込んでいる相手が誰かわかっている場合には、従来の名誉毀損と同じように、書いている当人に対し、内容証明郵便等によって投稿の削除を要求することができます。
要求を拒否あるいは無視されるなどして、直接の請求では削除が叶わない場合には、サービスを提供している事業者に対して、誹謗中傷であることなどを理由にして削除の請求を行うことが考えられます。権利侵害が明らかである場合にはスムーズに削除がされることもあるので、こちらの方法を最初に選択することも事案によっては考えられます。
ただし、事業者によっては、削除請求に対する反応がなかったり、削除請求があったことが公開されてしまい、かえって被害が拡大してしまうこともあり得ます。事業者の特色等を勘案して、適切な方法を取る必要があります。事前に弁護士に相談することがおすすめです。
上記の任意の削除請求のほか、プロバイダ責任制限法3条をふまえた「ガイドライン」に基づく請求というものもあります。
この場合、事業者に書面で削除請求を行うと、事業者は書込者に対して投稿の削除の可否を尋ねる連絡をし、7日以内に異議がない(または不合理な反論しかできない)場合には削除がされるという対応になります。
これらの手続を用いても解決ができない場合や、解決の見込みが低いと最初から予想される場合には、裁判所の手続を用いて削除の請求をすることも可能です。「仮処分」という迅速な手続を用いることが多いです。
書き込みの削除のほか、生じた損害についての賠償を求めることも検討できます。こちらについても、内容証明郵便等で賠償を求め、支払いが得られない場合には通常裁判を行う、という流れとなります。
さらに、極めて悪質なケースについては、上記の民事上の対応だけでなく、刑事告訴についても検討する必要があります。
2 相手がわからない場合
書き込みを行っている人物が匿名で誰だかわからない場合でも、事業者に削除を求めることはできますが、書き込みをした者に対する削除請求や賠償請求等はできませんので、これを行いたい場合、まず、書き込みを行った者が一体誰なのかを明らかにする必要があります。
これについても、プロバイダ責任制限法が定めを置いており、書込者の住所氏名等につき、任意の情報開示請求、裁判所の仮処分手続を通じての開示請求等を行う事ができます。要件は、「権利が侵害されたことが明らか」でかつ「開示を受ける正当な理由」があること、です。
開示により書き込みを行った者がだれかわかれば、その後にとる手続は「1」で説明したとおりです。
3 さいごに
ここではインターネット上の誹謗中傷、名誉毀損の対応につきざっと概略を説明しましたが、この分野はまだ問題として浮上してから日が浅いため、日々状況が変化しているのが実情であり、とるべき対応、注意点なども今後変わってくる可能性があります。
また、名誉毀損そのものについても、「真実性、相当性の法理」(公共の利害に関する事実に関するものでかつもっぱら公益を図る目的があり、摘示事実が真実であるか真実と信じることに相当な理由があれば、表現は不法行為とならない、というものです。)「公正な論評の法理」などの理論が存在し、「この書き込みは名誉毀損であり削除、損害賠償が認められる」、といえるかどうかの点から検討する必要があります。
お困りの方は、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。