城北法律事務所 ニュース No.69(2014.1.1)

目次

改悪生活保護法が成立!
新たな闘いへ

弁護士 田見高秀

生活保護費の抑制策を盛り込んだ大改悪生活保護法と生活困窮者自立支援法は、12月6日、衆院本会議で採決され、自民、公明の与党と日本維新の会、みんなの党、生活の党の賛成多数で可決、成立した。共産、社民の両党は反対。民主党は本会議を欠席した。改悪生活保護法は2014年から実施される。

改悪法は、保護の申請時に、本人の資産や収入などを記した申請書と所定の書類の提出を義務付け、手続きを厳格化した。口頭での申請も例外として認めるが、どんな場合が該当するかは明確になっていない。生活に困窮し保護の申請に行っても、窓口で申請書を渡してもらえず、申請受付を拒否する違法対応事例(行政の「水際作戦」と批判されてきた)がこれまで多数あった。月収3000円、所持金300円で申請に行き五回も申請を拒否された大阪府岸和田市のケースで、2013年10月に市の申請拒否を違法とする裁判所の判決が出されたばかりだ。改悪案は、申請拒否を合法化しかねず、セーフティーネットとしての生活保護の意義を無にするおそれがある。

また、改悪法は、生活保護の申請を受けた自治体が、申請者の扶養義務者(つまり、申請者の子や親や兄弟姉妹その他の親族)に扶養ができない理由の説明を求めたり、扶養義務者の収入や資産状況に関し扶養義務者の勤務先や銀行などを調査したりできるようにした。保護を始める時に扶養義務者に書面で通知する。

国会の審議の中で、扶養義務者に対し「扶養義務者の扶養を優先的に受けることが前提」などと記した文書を送付していた自治体があることが報道され、国会でも取り上げられた。改悪法は、こうした自治体の対応を是認し、助長するものとなりかねない。

改悪生活保護法との闘いが始まる。これは憲法25条で基本的人権として保障された生存権を守る闘いだ。2013年8月から、厚生労働大臣の告示で、大幅な生活保護費削減(3年間で10%減額)が既に実施されており、この減額が生存権侵害だとする不服申立(審査請求)が全国1万人を超える生活保護受給者によって闘われている。2014年には、この保護費減額の取り消し命令を裁判所に求める行政訴訟を大規模に行う動きもある。

憲法12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とする。基本的人権は、これを侵害する政府の行為を国民の行動で是正・撤回することによって、本来の価値を保つものだ。

改悪生活保護法の成立の今年は、その廃案のための闘いの第一歩目の年。


アンチエイジング考
脱原発の時代に

弁護士 小沢年樹

大震災と福島原発事故は、戦後日本が追い求めてきた高度経済成長とそれを支えた国家官僚・巨大企業主導の体制に、国民の大いなる疑問を抱かせる契機となりました。そして、いわばファッション的、広告宣伝的な「地球にやさしい」「省エネ・クリーン」といったこれまでの「環境保護的キャッチフレーズ」の連呼から、持続可能な経済社会のあり方を模索する「地産地消」「フェアトレード」などの枠組み構築が、本格的な政治課題となる兆しが見え始めています。深刻な原発事故被害の救済と事故収束の手立てを全力ですすめることと同時に、資源・エネルギー浪費型の社会をどのように転換していくかが、後の世代のために私たちに課せられた責務です。

ところで、世は挙げて「アンチエイジング」ブームです。これには①高価な化粧品や高級食材料理、さらに健康器具や美容整形などの「若返り用特注品」の推奨と、②人間に内在する「自然」=「動物的存在としての人間」の回復を提唱する2つの流れがあります。前者は、「不老長寿」を願う権力者らが古代から追い求めてきた「秘法」的思考であり、後者は、最近注目の「化粧をしない肌の保全」や「一汁一菜」「免疫を高め過ぎない」といった「スローライフ」のすすめです。脱原発とアンチエイジングは、人類と個人がそれぞれ抱える人間的難問ですが、同じコインの表裏の関係にあるといえるでしょう。あなたは、どちらのアンチエイジング派ですか?