城北法律事務所 ニュース No.73(2016.1.1)

目次

特集 改憲阻止のたたかいと城北法律事務所50周年

池袋駅前でアピール
今年も街頭宣伝を続けます

弁護士 大山勇一

城北法律事務所では、事務所創設50周年記念行事を進めるのと並行して、安倍内閣が強行する「戦争法案」(安全保障関連法案)に反対するための街頭宣伝を繰り返し行いました。当初は、国会前で行われている「総がかり実行委員会」主催の金曜日デモへの参加を呼びかけていたのですが、国会情勢が緊迫する中、国会前デモに参加するとともに、あわせて国会前以外の各地域でも広く市民にアピールをしていくべきではないかとの思いから宣伝をするようになりました。

隔週の木曜日に池袋駅西口で「STOP海外戦争法!~今こそ平和憲法とともに立つ~」という大きな横断幕を掲げて、弁護士と事務局がそろってチラシやパンフを配布すると、駅頭を行き交う市民の方から声をかけていただくことが回を追うごとに増えていきました。日本弁護士連合会や憲法学者がこぞって「戦争法案は明らかに憲法に違反する」と断言する中で、地元の弁護士が解説を加えてアピールする効果はかなりあったのではないかと思います。もちろん事務局も負けずにマイクを握ります。戦争法案が成立すると日本社会が変わってしまい、身近な人が戦争に加担させられてしまいかねないという危険性を訴えると、道行く人々もつい聞き入ってしまうようでした。

好意的な反応が多い一方で、逆に「法律が成立しても日本が戦争に参加するはずはない」「今の国際情勢を考えると自衛隊を海外に出さないで済むはずはない」などといった反対意見もあり、話し込むこともありました。反対意見を持つ方々との対話は、むしろ理解を深めてもらうための貴重な機会ですし、またこちらのアピールに欠けている点を知るきっかけにもなります。日本を守るためには集団的自衛権までは必要ないこと、暴力の連鎖がテロの温床になってきたことなどを丁寧に説明することもありました。私たちが宣伝していると、「ビデオカメラで録画していいですか。もっと多くの方にこの話を聞いてもらいたいので、後でウエブサイトにアップしたい」と申し出てくれる方もいらっしゃいました。こうしたウエブ上での発信力はまだ事務所に欠けているところかもしれません。

街頭宣伝には、所員だけではなく、地域の同じ志を持った方々にも一緒に参加していただきました。また、所員が他の団体の主催する街頭宣伝に駆けつけて、応援弁士を引き受けることも多々ありました。世論調査を行うたびに戦争法案反対の声が上昇していましたので、私たちも街頭宣伝の手ごたえを強く感じていました。

残念ながら、9月19日に安倍内閣は戦争法案を強行採決してしまいました。しかしその後も、意外なほどに周囲のみんなは明るく前向きです。「終わったものは、また始めればいい」-その意気込みに励まされ、事務所もまた、街頭宣伝を復活させました。今年もまた、池袋駅西口で「戦争法は廃止へ」を訴え続けていきます。廃止を実現するまで私たちは諦めません。


今こそ表現の自由を! ―見守り弁護団
国会前の過剰警備への対応

弁護士 野口景子

安保法制が審議された昨夏、多くの人々が国会前に詰めかけ、「安保法制反対」と声を挙げました。

政治情勢は緊迫した状態が続いていましたが、国会前で若者がマイクを握ったコールはリズミカルで、参加者であふれた歩道でも子ども連れや車いす利用者の方のために周囲の人々が声をかけ合って道をあける、あたたかな雰囲気のデモが連日行われました。

ところが、そんな国会前で、警察官が青信号でも横断歩道を渡るのを阻止したり、参加者をビデオ撮影したりと、初めてデモに参加する人を戸惑わせるような行動を繰り返していました。警察側は「国会前に多くの人が詰めかけ、安全を確保するために交通規制が必要だ」という説明を繰り返しています。

しかし、実際の現場を見ると警察側の言い分は詭弁としかいいようがありません。国会前の車道全てを通行止めにし警察車両で埋め尽くしておきながら、歩道が何人もの人が体調不良を訴えるほどすし詰め状態になっていても「車道は危険だから」と車道を開放しない、後ろから押されて車道側に転倒して警察官にぶつかってしまった参加者を公務執行妨害で逮捕している有り様です。警察官が「てめえ」などと乱暴な言葉を投げかけ、参加者を煽る場面も珍しくありません。また、現実に犯罪が行われている訳でもないのに、デモ参加者個人を撮影することはプライバシー侵害に当たる違法な行為です。

このように警察が大量の人と装備を投入し、形振り構わず過剰警備を行う背景には、国会前の車道まで人で埋め尽くした映像や写真を報道されたくないという思惑があるとも指摘されています(国会前は街路樹が多く、歩道に大勢の人がいても上空から撮影した写真には写らないのです)。

しかし、国会前で安保法制について自分の意見を表明することは、それが賛成の意見でも反対の意見でも、表現の自由として憲法が保障している大切な権利です。警察の警備活動の名を借りて国民の権利・自由を干渉することは認められていません。

こうしたなか、弁護士有志は過剰警備や不当な逮捕を防ぎ、逮捕者が出てしまった場合にはその弁護人として活動を行う「見守り弁護」の活動に取り組んでいます。見守り弁護団が過剰警備に抗議する申し入れを行った後、以前よりも横断歩道の開放が行われるようになったということもあります。

過剰警備の光景を見るたび「この国は議論を通じて国のあり方を決めていく民主主義国家なのか」とため息が出ることもあります。けれど、多くの人々がデモに参加し抗議の声を挙げ続けることが、過剰警備を改善させる大きなエネルギーとなります。

安保法制は可決されましたが、廃案に向けた国会前のデモは今も行われています。城北法律事務所の青いのぼり旗や「弁護士」と書かれた腕章を身につけ見守り活動に当たっている城北の弁護士を見かけた際はお気軽にお声かけくださいね。