城北法律事務所 ニュース No.75(2017.1.1)


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法律相談

自転車の交通事故
いざというとき保険の確認を

弁護士 津田二郎

Q 小学生の子どもが歩行中に自転車とぶつかって、骨折してしまいました。費用について何とかしたいのです。

A それは大変でしたね。加害者が自転車の損害保険に入っていないでしょうか。加害者が自転車の損害保険に加入していれば、自転車事故によって生じた損害を償ってもらえます。

Q それが、加害者は自転車の損害保険には加入していなかったようなのです。

A もし加害者やその家族が自動車を所有していて、任意の損害保険に加入していれば、その保険で加害者が生じさせた損害を賄えないか確認してみてください。保険加入者やその家族が自動車事故以外で生じさせた事故による損害を特約によってカバーしているものもあります。

Q はい、一応確認してみます。ただ加害者は小学生だったのです。

A なるほど、そうすると加害者のご家族の協力が必要ですね。加害者の保護者が傷害総合保険に加入している場合には、その保険が使える場合があります。また火災保険やクレジット契約をしている場合に、傷害保険の特約がついている場合もあるので、この点も確認してみてください。

Q 加害者側の保険が使えなかったら泣き寝入りなのでしょうか。

A いいえ。もしお子さんが登下校の途中で事故にあわれたなら学校で加入している保険が適用されるかもしれませんので、学校に相談してみてください。加害者側で賠償責任を負う場合には保険金が下りない場合がありますが、加害者が逃走して誰だかわからないような場合には保険適用の可能性があります。また見舞金がもられることもあります。

そのほか、加害者側の保険が使えない場合でも、被害者側で加入している各種保険(傷害総合保険、自動車の損害賠償保険、火災保険、クレジット契約等)やその特約でカバーされていないか確認してみるとよいでしょう。約款を見てわからなければ、直接保険会社に問い合わせるとよいでしょう。

保険が適用されない場合でも、加害者のご両親に民法上の不法行為責任(714条1項本文)の責任を追求できる場合があります。

ただし加害者がきちんとルールを守って自転車に乗っていたのに、被害者が飛び出したなどの具体的事情によっては、加害者の保護者や保護者に代わって監督する者に責任が問えないとされる場合もあります(民法714条1項ただし書)。

今後は自転車事故など思わぬ大事になることがあるので、家族で傷害総合保険に入っておくと被害にあっても加害者になっても安心かもしれません。


遺言と信託の活用
解決方法の一つとして

弁護士 小薗江博之

遺言をすれば、遺産分割手続きを経ることなしに、自己の資産を承継してほしい人に遺贈または相続させることができます。

しかし一つの不動産が遺産の大半を占めるような相続のケースでは、当該不動産を共同相続人の一人が引き継いでも、他の相続人から遺留分減殺請求があると、代償金を支払うことが難しく結局不動産を売却しなくてはならない場合があります。

このケースの場合、不動産を所有権として共同相続するのではなく、当該不動産を信託財産とする信託を設定し、受益権を共有化することが考えられます。すると、共有者としての権利・財産価値は維持しつつ、管理処分権限を受託者(財産を預り管理する人)に集約させることができ、解決できる場合があります。

また、相続発生以降の代々にわたる承継の順序を指定して、資産承継(経営権承継)の道筋をご自分の意思で作り上げることもできます。

通常の遺言では無効とされていますが、2次相続以降の財産の承継先の指定ができます。方法は、生前に不動産信託契約を行い、最初は本人が受益者となり、次に配偶者、次に子の順で受益者となり土地建物の利用を図ります。

また未成年の子に対して財産の利用をさせたいのだけれども、死亡後名義を子にすぐに移してしまうと、子供が勝手に売ってしまったり、希望に沿わない形の使い方をすることが予想されるときは、遺言で未成年者の後見人を選任することもできますが、信託では、信頼できる人を受託者、子を受益者として、子に対して徐々に財産を移転させたり、名義は子の名義にせずにその使用の利益だけを子に受けさせること等が可能となります。

もし本人の判断能力が低下しても受託者に財産を管理・処分する権限を与えるので、この点は任意後見制度の代用にもなります

なお任意後見は、本人が判断能力を有する時点で、将来自分が能力を失ったときの財産管理、身上監護をする者を予め決めておく制度です。

受託者の選定にあたっては、財産の管理をしっかりしてくれることが必要になるので、子など相続人予定者にすることのほか、弁護士等第三者に信託することもできます。相続人予定者に委託するときも、弁護士を監督人として指定し、資産の勝手な処分を防ぐこともできます。

なお信託は、財産関係に限られるので、身分関係(相続人の廃除またはその取消、非嫡出子の認知、未成年者後見人の選任など)に関しては、遺言をする必要があります。

詳しい説明をご希望の方は、ぜひ当法律事務所にお問い合わせください。