城北法律事務所 ニュース No.77(2018.1.1)

HPV(子宮頸ガン)ワクチン薬害訴訟 実名を公表し必死の訴え

弁護士 結城 祐

HPVワクチン薬害東京訴訟は、11月22日に第4回期日を迎え、今年実名公表を決心した女性の素晴らしい意見陳述がありました。彼女は、第1回期日に参加した際、多くの被害者が車いすに座りながら自分の思いを伝えている姿に感銘を受け、私にも伝えられることがあると思い、実名公表を決心したそうです。国と大企業が相手の闘いですから、非常に勇気のいる決心だったと思います。彼女は、優しい看護師であった祖母の姿を見て看護師になる夢を持ち、いち早く看護師になるため中学を卒業後、5年制の学校に通学しました。ところが、中学3年生の時に3回接種したワクチンの影響で全身の痙攣、過呼吸、不眠といった症状が現れ、悪化の一途を辿りました。それでも学校が大好きだったので松葉杖をついて必死に通学を続けましたが、退学し夢を諦めざるをえませんでした。現在も多種多様な症状に悩まされています。意見陳述の際も痙攣で震える体を懸命に抑えながら、「みんな早く元気になりたい、ワクチンを打つ前の体に戻してほしい、勉強がしたい、社会に出たい、家族に安心してほしい、早く前に進みたい、助けてほしいと声をあげている私たちを見てください、いないものとしないでください」と必死に訴えました。被害者は皆さんの支援を必要としています。支援ネットワークが設立され、1月19日6時半から弊所にて会議が行われますので、ぜひご参加ください。


ハッピーロード大山商店街を守ろう!④

弁護士 湯山花苗

特定整備路線補助26号線道路問題は、2015年8月21日、道路事業認可が違法であるとして提訴したものです。私たちは、当初から現地調査や地権者への聞き取りなどを行ってきましたが、訴訟を進めるうえで、今般、改めてハッピーロードの歴史的経緯をたどることとなり、ハッピーロードが商店街としての機能を超え発展してきた様子や、地域の人々の知恵を結集させた大切な場所であることが再確認できました。

また、特定整備路線の問題は大山だけではなく、北区赤羽でも同様に事業認可処分が出されたため、この事業認可の取消を求める訴訟についても城北法律事務所の弁護士らで担当することとなり(特定整備路線補助86号線訴訟)、2017年11月13日に提訴しました。赤羽駅から西側へ高低差の激しい地形に道路を通す計画で、道路を通す意味も実現可能性も乏しい内容です。

今後、この訴訟は補助86号線訴訟として、補助26号線訴訟とともに、進捗をお伝えしていきたいと思っております。


薬害ヤコブ病訴訟 20年目の区切り

弁護士 阿部哲二

1997年9月に、薬害ヤコブ病訴訟を東京地方裁判所に起こし、私は弁護団事務局長としての活動を開始しました。

ヒトの脳硬膜が製品化されて脳外科手術で使用されていたところ、その製品にクロイツフェルト・ヤコブ病の病原体である異常プリオンが付着していたことから、患者がヤコブ病に感染ししました。ヤコブ病には治療方法がまだなく、発症すると無動無言となって多くは1~2年で亡くなるとされています。

ドイツで作られたこのヒト由来製品は、長い間日本に輸入され多くの手術で使われてきました。アメリカでは、1例の症例報告後直ちに輸入規制がとられたのにもかかわらずです。1997年に始まった東京訴訟は大津の裁判と力を合わせ、2002年に国と企業に責任を認めさせて確認書を交わし、被害救済のルールを作り、薬事法の改正、生物由来製品感染被害救済制度の創設へとつなげてきました。

それから15年間、長い潜伏期間を経て薬害ヤコブ病の発生は続き、毎年数名の新規提訴、そして和解による解決が行われてきました。そして、最初の提訴から続いた裁判も20年目の2017年7月で全て終了しました。これまで裁判となった患者は大津と合わせ136名に及びます。

一つの区切りを向かえました。しかし、また何時患者が発生するかもしれません。薬害根絶と被害の全面救済のために弁護団はまだ体制をとかずにいます。


給費制 司法修習生の給費制廃止違憲訴訟で不当判決!

弁護士 種田和敏

司法試験を合格した者が裁判官や検察官、弁護士になるためには、最高裁判所が1年間実施する「司法修習」を受けなければなりません。司法修習生に対しては、以前は国から給与が支払われていました(給費制)。しかし、2011年11月以降に司法修習生になった者については、給費制が廃止され、生活費を貸し付ける制度(貸与制)に変更されました。

これに対し、2013年8月、給費制が廃止されたことは憲法違反だとして、元司法修習生が東京、名古屋、広島、福岡の各地裁で国家賠償請求を提訴しました。その後、同種の裁判を札幌や熊本、大分の各地裁でも提起しました。

この裁判の判決が、2017年9月以降、広島、東京、大分、福岡の各地裁であり、給費制を国会の裁量で廃止することは憲法上、何ら問題がないという理由で、請求を認めませんでした。しかし、給費制は、法律家の育成になくてはならないものであり、司法の在り方をも左右するという意味で、市民にとっても重要な制度だといえます。また、三権分立の観点からも、国会の一存で司法の根幹に関わる制度の廃止ができるとすると、司法が市民の権利の守り手として本来の役割を全うできなくなるおそれがあります。

その点で、いずれの判決も不当であり、現在、各地の高裁に控訴しています。今後とも、皆さまからのご支援のほど、どうぞよろしくお願い致します。