城北法律事務所 ニュース No.58(2008.8.1)


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目次

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全国でB型肝炎訴訟はじまる 
国の集団予防接種対策を問う

弁護士 小沢年樹

B型肝炎は、出産や輸血などで肝炎ウイルスに感染することが原因の病気と思われていますが、乳幼児期の集団予防接種時に、「注射器使いまわし」によって感染してしまった方が大勢います。この裁判は、充分な安全対策をとらなかった国の責任を追及しています。

いま日本には、B型肝炎の患者・ウイルス保有者(キャリア)が、100万人以上いるといわれています。B型肝炎には、成人してからの一過性感染もありますが、これはほとんどの人が文字どおり一過性で短期間に治癒するものです。しかし、乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、多くの場合は持続性感染となり、キャリアとしてウイルスと生涯付き合わなければなりません。さらに、慢性肝炎を発症したり、肝硬変や肝臓ガンにまで病気が進行することもあり、多くの人が定期検査や治療の負担に耐えながら、つらい生活を送っています。

こうした乳幼児期の感染は、出産時の母子感染がほとんどであるといわれてきました。しかし、母親がウイルスのキャリアでない場合には、就学前の集団予防接種における注射針・注射器の「使いまわし」による感染だったことが判明しています。集団予防接種の安全対策を怠った国の責任を追及するB型肝炎訴訟では、2年前に最高裁の勝訴判決が出ましたが、厚労省は「原告5人だけの問題にすぎない」として、100万人以上もいるB型肝炎患者の救済を完全に無視しています。

そこで現在、全国の裁判所であらたなB型肝炎訴訟が提起され、この夏には東京でも初の提訴が予定されています。みなさまのご理解をよろしくお願いいたします。


薬害肝炎訴訟‐薬害C型肝炎救済法の成立 
今後の課題‐治療体制の確立と再発防止

弁護士 嶋田彰浩

2002年10月以降、東京等5つの地裁で提訴された薬害肝炎訴訟は、2007年9月までに各地裁で判決が言い渡され、そのうち4地裁で、責任時期は異なりますが、国及び製薬企業の法的責任が認められました。

原告団は、東京地裁判決後の2007年3月から12月にかけて、国の法的責任を認めた地裁判決を武器に、薬害肝炎被害者の全員一律救済を求めて、日比谷公園での座り込みや署名などの宣伝・要請活動を精力的に行いました。そして、このような原告の姿勢に共感してくれたマスコミ、国民の支援に支えられ、12月23日、ついに議員立法による薬害肝炎被害者の全員一律救済を福田首相に決断させ、本年1月8日に衆議院で、11日には参議院で、いずれも全員一致でいわゆる薬害C型肝炎救済法が可決成立しました。そして、同月15日に、原告団と厚生労働省が基本合意書を締結し、さらに原告団に対し、福田首相が面談のうえ謝罪しました。

このように、薬害肝炎訴訟としては一定の解決がなされましたが、たとえば血友病など先天性疾患の感染や輸血による感染の場合には、この法律によっては救済されません。

そもそも、この訴訟の究極の目的は、B型肝炎も含めて350万人のウイルス性肝炎患者のための治療体制(医療費助成、治療休暇制度、肝癌患者等の介護も含めた生活支援等)の確立と繰り返される薬害の再発防止にありました。

原告団・弁護団は、かかる目的達成のため、今後も精力的に活動して参りますので、ご支援・ご協力をお願いします。


薬害イレッサ訴訟 
製薬企業に依存する証人の信用性

弁護士 阿部哲二

最近、利益相反という言葉が医学の世界で聞かれます。これは、企業から依頼を受けて企業のために活動する立場と、研究者・学者という立場など理念が相反する状況に置かれたことをいいます。学者が、ある薬の有効性を論じるときには、当然、その薬を開発した企業から寄付を受けて研究していたら、事実を公表しなければいけません。その学者の論述には、企業の利益にひかれて歪みが生じている恐れがあるからです。

薬害イレッサ訴訟では国・企業アストラゼネカ社の申請により福岡正博近畿大学教授、坪井正博東京医科大准教授が証言台に立ちイレッサは有用だと証言しました。

しかし、福岡証人が理事長を勤めるNPO法人には、アストラゼネカ社から毎年2000万円、合計1億円以上が寄付されていました。坪井証人は、アストラゼネカ社からこれまで500万円以上の講演料などを受け取っており、特にイレッサが承認された2002年、2003年には年間100万円以上受け取っていました。坪井証人が所属する大学病院の講座には、やはりその2年だけ、企業から各500万円、合計1000万円が寄付されていたのです。

2002年から2003年にかけての一年半だけで、400人近いがん患者が、残された大切な生命をイレッサの副作用によって奪われていったのです。

企業と国はこのようにお金のからんだ証人を申請してよいのか、そして、こんな証人の証言が信用できるのか、イレッサ訴訟では、この点も問われています。