城北法律事務所 ニュース No.68(2013.8.1)


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薬害イレッサ訴訟
最高裁が国と企業の法的責任を否定

弁護士 阿部哲二

2004年から始まった薬害イレッサ訴訟について、最高裁判所は本年4月2日に国に対する上告は受け付けないとの決定を下し、4月12日にはアストラゼネカ社に対する上告を棄却、国と企業の法的責任を否定しました。

最高裁の判断は、東京高裁の事実認定をもとに、2002年7月のイレッサ承認時、イレッサには他の抗がん剤と同程度の間質性肺炎という副作用があることを予見できたにすぎず、この予見のもとで「重大な副作用」として下痢、肝障害等に並べて4番目に添付文書で注意したことに問題はないというものです。

しかし、イレッサ承認時20例以上の間質性肺炎の副作用症例があり、10例以上が死亡例という事実があったにもかかわらず、国は死亡の10例以上を無視し、「重大な副作用」で良しとし、その結果半年で180人もの死者をだしたのですから、指示警告がこれで足りていたということはありえません。

警告をしなかった状態では、分子標的薬として登場したイレッサの具体的現実的な危険性は医療現場に伝わらなかったのです。

最高裁が事実認定をしないとしてもその評価を誤ったというしかありません。

そして、過失よりも幅広く認められるべき欠陥について高度ともいえる予見可能性を要求して患者・消費者保護を認めないのは、製造物責任法の趣旨に反した法解釈ということになります。

抗がん剤の副作用についての世界的で最初の薬害訴訟、これをどのように進めるのか。原告・弁護団・支援としては最大限の努力をしてきました。このような結果は残念ですが、8年前にこの裁判を進めたからこそ、がん患者の生命の重さを問い、承認制度のあり方、市販後の安全対策のあり方等で前進を勝ちとることもできました。

一方、抗がん剤副作用救済制度については、検討会の設置まではさせたものの先送りとなっています。

最高裁判決では、「副作用が重篤であり、本件のように承認・輸入販売開始時に潜在的に存在していた危険がその直後に顕在化した場合について、使用した患者にのみ受忍を求めることが相当であるか疑問が残るところである。法の目的が、製造者の責任を規定し、被害者の保護を図り、もって国民生活の向上と国民経済の健全な発展に寄与することにあるならば、有用性がある新規開発の医薬品に伴う副作用のリスクを、製薬業界、医療界、ないし社会的により広く分担し、その中で被害者保護、被害者救済を図ることも考えられてよいと思われる」などと5人のうち3人の裁判官が救済制度に言及しています。残された課題です。

当事務所からは、私の他に、津田二郎弁護士、白鳥玲子弁護士、加藤幸弁護士が弁護団に参加しました。 

薬害イレッサの「裁判」としては区切りとなりますが、これからも薬害根絶、人権を守る闘いに一人ひとりが取り組んでいきます。ご支援、本当にありがうございました。


“子宮頸がんワクチン”って本当に大丈夫?
接種は慎重に

弁護士 松田耕平

「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」をご存じでしょうか。「子宮頸(けい)がんワクチン」と呼べば分かる方も多いと思います。この名のとおり、子宮頸がんを予防することを目的とするワクチンで、今年の4月から国・地方自治体が実施する定期接種の対象とされ、12歳から16歳までの女子であれば無料で接種が可能です。

「ワクチン」と聞くと、一度接種すれば病気にならずに安心と考える方もいるかと思います。国が定期接種の対象に位置づけ、推奨していればなおさらです。では、このHPVワクチンを接種すれば、今後一生、子宮頸がんとなることを予防できるのでしょうか?答えは「否」です。

結論から言うと、HPVワクチンの有効性と安全性には相当な疑問があり、ワクチン接種を考えている方(女子本人と保護者の皆さん)は、接種によるメリットとデメリットをよく考えてから決めた方が良いと思います。

子宮頸がんは、他のがんと比べると、早期に発見し、治療を開始すれば、予後が良いと言われていますが、早期発見・早期治療のための有効な手段として、子宮頸がん検診があります。この点、HPVワクチンを接種したとしても、①HPVワクチンが有効なのは約半数のタイプであること、②HPVワクチンの有効期間が約8~9年程度であることから、結局は、子宮頸がん検診を受診しなければならないことに変わりはありません。

他方、HPVワクチンを接種した方の中には、失神などに加えて、ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と言われる重篤な副反応に遭った方もいます。実際に重篤な症状が出た方の姿がテレビや新聞で報道されたので、ご覧になった方もいると思います。こうした副反応の症例数は、他のワクチンと比較しても相当多いのが現状です。

厚生労働省は、当初、HPVワクチンは安全であるとして接種を勧奨してきましたが、今年6月、重篤な副反応症例が相次いで報告されたことから、「接種の勧奨を一時的に控える」として、態度を変えました。ですが、定期接種を中止したわけではなく、今でも無料で接種することは可能な状況です。

保護者の方には、こうした状況を踏まえ、お子さんにHPVワクチンを接種させるかどうかについては、慎重に考えていただきたいと思います。なお、本文では字数の制限上、詳細な情報は大分カットしてあります。

詳細をお知りになりたい方は、薬害オンブズパースン会議のホームページ(http://www.yakugai.gr.jp/)に、HPVワクチンに関するQ&Aが掲載される予定ですので、そちらをご覧ください。