城北法律事務所 ニュース No.80(2019.8.1)


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個人の尊厳をふまえ多様性を求める

弁護士 菊池 紘

■ 妊娠リストラの裁判

2002年に妊娠リストラの裁判に携わりました。その女性は、流産の危険のため病院に行きましたが、これを知った上司から「手続き上退職になる」「復職は無理だ」と言われたのです。労働基準局の男女雇用均等室が間に入って「均等法違反だから、配慮した解決を」と求めたのですが「妊婦を雇って、もしものことがあったら、基準局の方で責任を取ってくれるのか!」と脅かされたのでした。やむをえず裁判に訴え、最後には会社が謝罪し再発防止を約束して、ようやく解決しました。20年近く前のことです。「日本人、男性、正社員」で作られ同質性を保ってきた日本の企業が、女性や不安定雇用、外国人など多様性を認める方向ヘ踏み出しはじめた頃のできごとでした。

■ 「ダイバーシティ」とそれに抵抗する人びと

外国人差別や排外主義に対抗しこれを克服するために、外国人や貧困者を包摂するダイバーシティ(多様性)の尊重が歴史的な課題となっています。

日本人、男性、正社員中心のかつての同質的な職場は、あらゆるところで、多様な人々がいっしょに働く職場に変わりつつあります。そしてこの動向は強まることはあれ、元に戻ることはありません。こうしたなかで、ダイバーシティに抵抗感を持ち、不寛容な態度をとるのはどういう人々かについて、ある調査結果がだされています。調査の内容は女性、外国人、高齢者とともに働くことへの抵抗感を聞いています。

その結果、抵抗の小さい仕事としては幼稚園教師や保育士、受付秘書などがあげられ、反対に抵抗感の強い仕事として、経営企画、警備・清掃・営業企画があがりました。また正社員、自営業の人々に抵抗感が強く、派遣・不安定雇用の人は寛容な姿勢を保っているという結果でした。厳しい目標管理など競争的な職場であるほどダイバーシティへの強い抵抗がみられます。こうした実情についてみなさんはどのように考えられますか。また、人材に関する差別裁判の対策としてダイバーシティが広がったとされていることもふまえて、考えなければなりません。さらにいえば、ダイバーシティはこの国の労働者が長年にわたって苦しんできた差別の構造をいまだに引きずっているからです。

■ 同質性の強調と多様性の尊重

森喜朗さんが「日本の国、まさに天皇を中心とした神の国だということを、国民のみなさんにしっかりと承知していただく」と発言したのは2000年5月のことです。天皇を中心とした日本民族の国ということになると、民族の同質性を強調し他の人々との間に壁を持ち込み、差別をひろげることが懸念されます。事務所の弁護士も加わっている君が代強制に反対する裁判もこの問題に深くかかわっています。「天皇を中心とした神の国」をいう人がオリンピック組織委員会会長に座ることの意味が考えられなければなりません。

つい最近も、北朝鮮がミサイル発射実験をおこなうと、民族教育の学校へ抗議の電話がくりかえされ、こどもたちに嫌がらせが続きました。その前のイラク人質事件の時にも、イラクの人々を支援し救済する活動をする人への「自己責任」攻撃が執拗に広がりました。

しかし日本国憲法は、前文で「人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」とし、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」「われらは全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」して、日本の国民はもちろん、それをこえてひろく世界の人々と手をつなぐことを訴えています。

こうして「すべて国民は個人として尊重される」との憲法原則(13条)のもとで、いま私たちに問われているのは、おそらくつぎのようなことです。あらゆる場面でハラスメントに苦しむ人々をなくすること。女性の差別雇用と賃金格差をなくしてジェンダー平等(性差による社会差別の根絶)をすすめること。性暴力を許さないこと。LGBT(性的思考・性自認)の差別をなくすること。そして在日外国人の差別をなくし、ヘイトスピーチを根絶すること。


安倍9条改憲NO!
全国統一署名(3000万人署名)お礼とご報告

これまで事務所ニュースに封入するなどして皆様にご協力をお願いしておりました「3000万人署名」ですが、おかげさまをもちまして、2019年6月末現在3247筆のご協力を得ることができました。大変ありがとうございました。
当事務所では、皆様からのご支援を力に、安倍改憲阻止のため、いっそう取り組みを強めてまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。