城北法律事務所 ニュース No.80(2019.8.1)

<法律相談>交通事故被害について

弁護士 大久保 秀俊

Q【質問1】 停車中に後続車両から追突されてけがをしました。相手方の保険会社からは、損害賠償金は●万円だと言われています。もう少し金額は増えませんか。

A【回答】保険会社は一般的に、社内基準に基づく賠償金の提示をしてきます。交通事故の算定基準としては、他にも裁判基準というものがありますが、これは社内基準よりも高額です。ご自身で対応された場合には、社内基準による賠償金の提示がなされるのみで、より高額な裁判基準による合意は困難です。他方、弁護士が介入することによって裁判基準での請求が可能となります。

Q【質問2】相手方の保険会社の方との対応がストレスです。

A【回答】保険会社は営利企業ですので、上述のようにより低額な賠償金を示したり、途中で治療費の支払をやめたりするなど、賠償金を抑えようとしてきます。そのため、ご自身で対応することは非常に大きなストレスとなります。このような場合に弁護士に事件の依頼をすると、受任した弁護士が交渉の窓口となり、ご自身で保険会社の対応することはなくなり、ストレスからも解放されます。是非一度ご相談ください。

Q【質問3】弁護士費用についての保険があると聞いたのですが。

A【回答】被害者の方がご加入されている任意保険によっては「弁護士費用特約」というものが付帯されていることがあります。また、ご自身が加入されていない場合でも、ご家族がご加入されているものに付帯されているケースもございます。さらに自動車保険以外にもご自身やご家族がご加入されている損害保険に付帯されているケースもあります。
弁護士費用特約を使えば、原則として依頼者様の弁護士費用のご負担はなく、安心して弁護士を利用することができます。ご自身が利用できるケースか否かも含めご相談ください。


<法律相談>会社が残業代を支払ってくれない どうしたら…

弁護士 津田 二郎

Q【質問1】毎月何時間も残業をしているのですが、会社が残業代を支払ってくれません。これまでの支払を求めることはできないのでしょうか。

A【回答】会社には、原則として、労働者に働いた時間に応じて賃金を支払う義務があります(民法633条)。「年俸制」や「裁量労働制」を理由に支払いを拒む使用者もいますが、それぞれ残業代を支払わなくていい場合には厳しい要件があるので、それを充たしていない限りは残業代を請求することができますし、役職者であっても残業代を請求できる場合があります。初めから諦める必要はありません。

Q【質問2】私はパートタイムなのですが、残業代は支払われますか?

A【回答】もちろん正規非正規の雇用形態にかかわらず働いた残業代は支払われなければなりません。
ただし、割増賃金が支払われるかどうかは別です。残業に割増賃金を支払うかどうかは、まずは就業規則等で決まります。そこに定めがなければ、法定の週40時間を超えた残業時間について25%以上の割増賃金を請求することができるのが原則です(労基法37条)。深夜労働や休日出勤の場合にはそれぞれ25%増し、35%増しの割増賃金を請求できます。

高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者には労基法の労働時間規制が及ばないので、残業代は払われませんが、要件が厳しいため現時点ではほとんど利用されていません。

Q【質問3】もう退職してしまったんですが、請求できないのでしょうか。

A【回答】退職しても未払いの残業代は請求できます。ただ現在のところ賃金の消滅時効は2年間(労基法115条)で、それを超える期間については請求が認められない場合がありますので注意が必要です。もっともこの消滅時効が短い点については昨今議論があり、5年間に延長することが議論されているところです。