城北法律事務所 ニュース No.83(2021.1.1)


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<事件報告>裁判例紹介 ◎ 借地借家の問題 「相当の更新料」は払わなくてよい!

弁護士 種田 和敏

借地や借家の場合、更新の度に、更新料の支払いで悩んでいる人も多いかもしれません。また、この更新料について、毎月の賃料とは違って、なぜ払わないといけないのか、疑問に思う人もいるかもしれません。

この更新料について、最高裁判所は、契約書などの書面に更新料の記載がない場合、賃借人が更新料を支払う法的義務はないと判示しています(1976年10月1日判決)。つまり、文書で更新料の約束をしていなければ、裁判をされても、裁判所は、更新料を支払えとは言わないし、そもそも更新料を支払う法的義務がないので、更新料を支払わなくても、裁判所は、出て行けとは言わないということです。

今回、ご紹介するのは、借地について、さらに進んで、書面に「相当の更新料」を支払うという記載があった場合のケースです。このケースについて、東京地方裁判所は、2020年2月27日、原告の請求を認め、前回の更新のときと同額の更新料を支払うように判示しました。しかし、東京高等裁判所は、同年7月20日、「更新料の支払請求権が具体的権利性を有するのは、それが、更新料の額を算出することができる程度の具体的基準が定められていることが必要であるところ、本件合意第3項は、その「相当の更新料」という文言が、抽象的で、裁判所において客観的に更新料の額を算出することが出来る程度の具体的基準ではないから、具体的権利性を肯定することはできない」と判示しました(なお、地主から、この判決に対する異議申し立てはなく、この判決は、確定しています。)。

この高裁判決は、一義的かつ具体的に記載された更新料条項に関し、高額に過ぎるなどの特段の事情がないかぎり、消費者契約法に反しないとした最高裁判所の2011年7月15日判決と同様、その記載を見ただけで、誰が計算しても、更新料の金額にブレがない場合でなければ、更新料を支払う必要は法的にはないと明言したものです。つまり、「相当の更新料」だけでなく、「相応の更新料」や「相場の更新料」、「路線価を基準にした更新料」という記載も、見た人によって、金額にブレが出るので、同様に、更新料を支払う必要はありません。

この判決を受け、ご自身の契約書に、誰が見てもブレない金額の更新料の定めがあるかを確認し、そういう定めがなければ、更新料を支払わないという選択肢を検討することをお勧めします。


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<事件報告>一審判決から大きく前進 東電福島原発「生業訴訟」仙台高裁判決

弁護士 菊池 紘

「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」と福島の4000人が訴えた「生業訴訟」で、9月30日に仙台高裁の判決が言い渡されました。判決は、一審に続き国と東電の責任を認め、10億1000万円の支払いを命じました。

午後2時半ごろ、仙台高裁前で「勝訴」「再び国を断罪」などと書かれた垂れ幕が広げられると、コロナの厳しい規制の中で集まった200人をこえる原告らからは、歓声と拍手が湧き起こりました。垂れ幕を出した原告の一人で、富岡町から郡山市に避難している深谷敬子さんは「事故後の9年は長かったが、本当に良かった」とくりかえし喜びを口にし、「勝訴という結果が出て足取りが軽くなり、これからの自分の人生を前に進めることができそう」と話していました。

「唯々諾々と受け入れた国は規制の役割を果たさず」

高裁では、2002年に大規模な地震の可能性を明らかにした国の「長期評価」を基に、東電と国の対応が問われました。

判決は東電の対応につき「新たな防災対策を極力回避しあるいは先延ばしにしたいとの思惑のみが目立つものであった」と批判しました。そして「原子力事業者は営利企業で利益確保のため、ややもすれば津波対策を先送りしたり、極力回避したりしようとする。規制当局はそれがあり得るとふまえて、安全寄りの指導、規制が期待されている」ところ、国の対応は「不誠実ともいえる東電の報告を唯々諾々と受け入れることとなったものであり、規制当局に期待される役割を果たさなかった」と、その責任を厳しく断罪しました。

小学生を読者とする毎日小学生新聞は「裁判所の判決は淡々と書かれていることが多いです。あえて『唯々諾々』と書いたのは、裁判官が『国はひどい』と考えたからでしょう。・・・・・国が自分でまとめた地震の専門家や科学者の意見を聞かないで、特定の会社の報告に『唯々諾々』と従ったのなら、『無茶苦茶』だなと思います。」としています。

そして判決は国と東電の重大な責任をふまえて、避難指示の対象区域に住んでいた原告については、一審判決が事実上否定した「ふるさと喪失損害」を認め、賠償額を大幅に上積みしました。さらに対象区域外に居住していた原告についても、一審判決よりも広い範囲について損害賠償を認めました。国の責任割合についても、東電と比較して低いとした一審判決を取り消し、あらためて国と東電が同等の責任を負うと厳しい判断をしました。