城北法律事務所 ニュース No.84(2021.8.1)


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目次

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<法律相談>会社が倒産しても経営者(保証人)は破産しなくてもすむ場合があります
~『経営者保証ガイドライン』の利用について~

弁護士 木下 浩一

経営が厳しくなっても、中小企業の経営者の方が早期の事業再生・廃業へと踏み出す決断をすることは容易ではありません。実際、当事務所にご相談に来られた時点で、既に経営者個人で多額のキャッシングをして会社に運転資金としてつぎ込んでしまっている方もよくおられます(むしろそれが大半かもしれません)。大切な会社と従業員の雇用を守りたい、債権者に申し訳が立たないという思いが強いことはもちろん、保証債務を負っているので会社を破産させてしまっては自分も破産せざるを得ず、そうなると経営者失格のレッテルをはられてしまうのではないか、破産により個人資産のほとんどを失うことになってしまうのではないかという恐れが決断の遅れの大きな理由かと思います。

しかし、決断が遅れれば遅れるほど、選択肢は少なくなってしまいます。例えば、破産申立には、予納金などそれなりの費用が必要となりますので、それすら用意できない資産状況に陥った段階では破産申立もできないという事態もありえます(会社自体の破産申立については個人事業主や会社代表者個人の破産申立とは異なり法テラスの利用は出来ません)。

他方で、決断が早ければ早いほど選択肢が広がります。例えば、経営者保証ガイドラインに基づいて保証債務の整理をすると、会社は破産させても、会社の債務を連帯保証している経営者が個人破産を免れられる場合があります。

具体的には、①金融機関の借入を保証している場合で、②財産隠匿、特定の債権者への弁済等不誠実な行為が無いこと、③会社で粉飾が無いこと等の条件を満たす場合には、会社が破産しても、保証人については、保証債務を一部弁済することで(場合によっては弁済なしで)、保証債務の免除を受けることが出来る可能性があります(②および③の条件については、ご相談前にご自身で条件を満たさない等と安易に判断しないでください。内容次第ではクリアー出来る可能性があります。)。

この手続きによって、経営者個人は破産をせずに保証債務の整理ができるのみならず、信用情報登録機関に登録もされず、破産手続によるよりも多くの個人資産を(場合により住宅も)残すことができる可能性があります。上記①の条件は重要で、会社が金融機関からの借入ができなくなった後、保証人個人のクレジットカードで多くの債権者から多額のキャッシングをしている状況等にあると、同ガイドラインで債務整理をすることは難しくなるので、早期の決断は重要です。

なお、経営者保証ガイドラインを利用した保証債務の整理については、解決までに長時間を要する可能性があり(金融機関にご同行頂くこともありますのでご本人の負担も大きくなりがちです)、また、破産手続のような法的整理ではないため、債権者の同意が得られない場合には結局破産手続等を利用しなければなりません。そのために更に処理に時間がかかるなどデメリットもあるので、事前によく検討する必要があります。

いずれにしても、早めにご相談頂いた上で、弁護士の適時適切なアドバイスを受けることは非常に重要ですから、是非お気軽にご相談頂ければと思います。