城北法律事務所 ニュースNo.88 2023夏号(2023.8.1)


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<法改正>通り抜け私道のライフラインの設備
~2023年4月民法改正~

弁護士 小薗江 博之

2023年4月1日から民法の一部が改正されました。

改正されたのは相隣関係、共有、所有者不明土地、相続関係4項目です。

最近、土地にライフライン(水道・ガス)の設備を設置する権利(設備設置権)について相談がありました。

「当家所有の通り抜け私道の掘削許可で質問です。隣地に接面する私道の掘削許可を出さないでいたら、隣地を公売で取得した建築業者が依頼した弁護士から手紙が来て掘削許可を出さなければ工事が遅れた分の損害賠償を請求します、とのお手紙をいただきました。掘削許可を出さなかったら損害賠償を要求することまでできるでしょうか?

当家私道に隣接する土地の公売の資料によれば、隣地には木造2階建ての家屋があり、接面する私道が幅2mと狭小であること、利用について所有者と協議が必要とのことです。

しかし、既に建物は解体され、当方との協議などなしに、建築業者が3階建て家屋を建てるので水道ガスの掘削許可を請求されました。なお当家私道は通り抜け私道で、軽自動車であれば通行可能ですが、狭くて危ないので、従来、利用に際して歩行のみに徹し車の通行は遠慮いただいていました。

隣地所有者に車の通行を禁止する良い手段と損害賠償請求にどう対応したらよいか聞きたいです」との相談でした。

今回の改正で、設備設置権が明文化され、水道ガスなどのライフラインを引き込むための通り抜け私道の掘削の際、土地所有者の許可は不要になりました。掘削する場合、あらかじめその目的、場所およびその方法を、その所有者に通知すれば足ります。したがって相談例では許可は不要と回答することになり、当然損害賠償義務は発生しません。

また私道に限らず、隣地を経由しないとインフラを引き込むことができない場合も必要な範囲内で、他人地に設備を設置する権利が認められました。

もっとも他人の土地を利用するので、土地所有者に最も損害の少ない範囲に限定されます。
なお工事にあたって、工事車両の使用は、原則として私道所有者の許可が必要です。例外は建築基準法の道路になっている場合です。

居住者が購入後も、車の使用は、私道所有者の許可が必要です。例外は建築基準法の道路になっているとき、所有者と契約があるときです。すでに家が建っているので、建築基準法の道路になっている可能性があります。

公売資料で、私道が幅2m、利用について所有者と協議が必要とあるので、意向を慎重に検討して判断いただければと思います。

なお自己の所有地に越境している木の枝の伐採について、今回の改正で隣地所有者の許可が不要になり、事前通知して、伐採できるようになりました。