城北法律事務所 ニュースNo.89 2024新年号(2024.1.1)


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<事件報告>建物の耐震性と立退き請求
立退きを求められたら、弁護士にご相談を!

弁護士 種田 和敏

借地人や借家人が団結し、自らの居住権や営業権を守る組合の集まりである、東京借地借家人組合連合会の常任弁護団に入って、今年で10年になります。そのため、賃貸借のご相談を多く受けますが、今回は、私が担当した裁判の判決をご紹介します(東京地方裁判所令和5年8月1日判決、大家側からの異議申立てはなく、確定しています。)。

この判決のケースは、借家(居住用のアパート)で、大家から、建物の老朽化を理由に建て替えたいから、解約すると言われたというケースです。このようなケースの場合、大家からの明渡し請求に、正当事由があるか(大家と借主のどちらが建物を使う必要性が高いか、立退料の支払により大家の必要性が補完できるか)が問題になります。この点、老朽化(耐震性も含む。)については、築年数によるところが大きく、特に、昭和56年に耐震基準が見直されたので、それ以前の「旧耐震」と「新耐震」で、耐震性に大きな差があります。昭和56年というと、43年前です。木造の建物であれば、大家が建て替えを考える時期でもあります。上記判決で問題となった建物は、築40年(昭和58年築)の新耐震の物件でした。

上記判決は、まず、大家の必要性について、「原告は、本件建物のような築年数の古い建物は今後も貸室としての競争力が相対的に低下していくといえることから、本件建物を取り壊し、新たに建物を建てることを計画しているところ、原告の目的や資産活用、土地の有効利用の観点からは、本件建物を時代の要請に沿った建物に建て替えることについても一定の合理性があり、原告が営利目的で本件建物を必要とする事情は一定程度認められる。しかしながら、上記認定事実によれば、本件建物の現状は、原告が指摘する付属施設や設備等について、相応の不具合は認められるものの、建物の躯体部分に関する老朽化には当たらない程度にとどまっている。」としました。また、借主の必要性については、「他方で、被告が、今後も本件貸室に継続して居住する必要性については、本件建物の立地する地域の住宅事情等に鑑みても、代替不可能であるとか、必要不可欠とまではいえないものの、原告の上記必要性との比較においては、なお相対的に高いものであるといえる。」としました。さらに、立退料については、「本件解約申入れは、原告による立退料の提示(最終的には200万円)をもってしても、相当な立退料の支払により正当事由が補完され、これが認められるべきものとまでは言い難い。」としました。この判決は、居住権や営業権を守る武器として、今後も使える、良い判決だと思います。

立退きなど土地や建物の賃貸借の問題で困ったら、まずは、借地借家人組合にご相談ください。城北法律事務所の近くには、城北借地借家人組合(東京都豊島区西池袋5丁目13−10、電話03-3982-7654)があります。組合の判断で、必要があれば、私も東借連の常任弁護団の一員として、ご相談や対応をします。