城北法律事務所 ニュースNo.89 2024新年号(2024.1.1)


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<法律相談>
〈交通事故の法律相談 連載企画 第2回〉
交通事故で負傷した治療を続けているときに
〜治療中 まだ痛いのに保険会社にもう治ったから治療費を支払わないといわれている〜

弁護士 久保木 太一

1 保険会社から「もう怪我は治っているから治療は必要ないのではないか」と打診された。

交通事故に遭うということは、一生に一度あるかないかの不運なことです。
その上で、相手方保険会社の対応が不誠実であれば、それはまさに「泣きっ面に蜂」であり、絶望的な気分になることでしょう。こうした交通事故の「二次被害」ともいえるような場面は、少なからずあります。

その一例として、まだ身体に痛みが残っているのにもかかわらず、相手方保険会社から、治療費の支払いを打ち切りたい、と打診される場合があります。

これは法律的には、「症状固定」の時期の問題となります。症状固定とは、治療をしても怪我の状態がこれ以上良くならない状態のことです。交通事故による怪我について、加害者負担での治療を継続できるのは、症状固定までです。症状固定をしてしまうと加害者は治療費を支払わなくて良くなるため、相手方保険会社は、症状固定の時期を早い時期に設定し、治療費の支払いを早めに切り上げようとしてくることがあります。とりわけ、むち打ちなど外部から怪我の状況が分かりにくい場合には、治療の必要はないとして、相手方保険会社が治療費の支払いを打ち切ろうとすることがよくあります。

この場合にも諦めるべきではありません。治療の必要性(症状固定時期)は、加害者や相手方保険会社が勝手に決められるものではありません。治療の必要性(症状固定時期)は、ご自身の自覚症状と医師の医学的判断によって決まります。ご自身に自覚症状があるのであれば、まずは医師に相談して、治療継続の必要性がないかを尋ねるべきです。仮に、医師が、これ以上は症状が改善しないと判断したら、その後は後遺症の問題になります。そうではなく、治療によって症状の改善が見込めるということであれば、医師の判断を基に、相手方保険会社と相談するべきでしょう。相手方保険会社に「治療費は支払えない」と言われたからといって、通院をやめてしまうと、その後の適切な補償を受けられなくなってしまうおそれがあるので、ご自身が必要と感じるのであれば、ためらわずに治療を継続すべきです。

もしも、ご自身が治療中で余裕がなかったり、相手方保険会社との交渉が困難だったりする場合には、弁護士に依頼することによって、ご負担を大幅に軽減することができます。

2 相手方保険会社から治療費の支払いを打ち切られてしまったら

自覚症状があり、医師にも治療継続の必要性があると診断されているにもかかわらず、相手保険会社が一方的に治療費の支払いを拒絶した場合には、怪我の治療の進捗や請求権の消滅時効も踏まえて、治療中、もしくは治療終了後に裁判などの法的手段を用いて症状固定時期を争うことになります。なお、交通事故に起因する精神的なショックにより精神科に受診した場合などの治療費に関しては、相手保険会社が支払いを拒絶することが多いので、裁判によって請求することになるでしょう。

3 交通事故の被害者が請求できる損害は

交通事故被害者が加害者(相手方保険会社)に請求できる損害には、怪我の治療費のほか、入通院の期間に応じた入通院慰謝料、付き添い費用、入院雑費、通院交通費、入通院に伴う休業損害、自動車の故障などの物損などがあります。また、後遺症が残ってしまった場合には、それに応じた後遺障害慰謝料、逸失利益も請求できる場合があります(後遺症が残った場合については次号)。

もっとも被害者側にも事故について責任があると判断された場合には、損害額が過失相殺されて相当額が減額されることがあります。既往症や身体の特徴(通常より首が長いなど)等の被害者側の事情が損害拡大につながっていると判断される場合にも、損害が減額されることがあります。

この点については、弁護士の専門分野ですので、弁護士にご相談ください。もしご加入の任意保険に弁護士特約が付与されている場合には、弁護士費用のご負担がありませんので、お早めのご相談が断然お得です。

[予告]
〈第3回〉症状固定後 ~医師にこれ以上治療しても治らないと言われた~(次号)