城北法律事務所 ニュース No.81(2020.1.1)


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〈事件報告〉マタハラを許さない! ~非正規雇用の女性に対する妊娠を理由とした不利益取り扱いをめぐって~

弁護士 種田 和敏

私は、現在、派遣社員の方で、妊娠を会社に報告した直後に、妊娠を理由に、雇止めをされた方の裁判を担当しています。雇止めが男女雇用機会均等法9条3項に違反して違法だという裁判です。

1 マタハラとは?   

「マタハラ」という言葉を聞いたことがありますか?

マタハラとは、「マタニティハラスメント」の略で、働く女性が妊娠・出産を理由とした解雇・雇止めをされるなど、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントで、働く女性を悩ませるセクハラ、パワハラに並ぶ3大ハラスメントの1つです。

マタハラについては、最高裁判所が、2014年10月23日に、妊娠を理由に降格を行ったことについて、業務上の必要性など特段の事情がある場合以外は、原則として、男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)に違反し、マタハラに当たるとの初判断を示しました。

この最高裁判決の影響もあって、マタハラという言葉は、2014年の新語・流行語大賞の候補になり、5年以内に在職中に妊娠した女性労働者における認知度は、2013年には6%しかなかったものが、2015年には93%にまで上がったりしました。

2 マタハラの実態

2015年に、5年以内に在職中に妊娠した女性労働者を調査したところ、マタハラにあったことがあると答えた人は約3割いました。働きながら妊娠した女性労働者のおよそ3人に1人がマタハラを受けたということですから、マタハラは深刻な問題です。

マタハラの具体的な被害としては、妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り(雇止め)、自主退職への誘導をされたり、正社員から契約社員に雇用形態が変更されたり、望まない異動をさせられたり、給料を減らされたり、妊娠中や産休明けなどに、心無い言葉を言われたり、妊娠中・産休明けに残業や重労働などを強いられたり、嫌がらせをされたりという実態が報告されています。

マタハラの原因としては、男性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足、職場の定常的な業務過多・人員不足、女性社員の妊娠・出産への理解不足・協力不足などが挙げられています。マタハラの根絶には、人々の意識が変わらないといけません。

3 男女雇用機会均等法9条3項

男女雇用機会均等法9条3項は、事業主が、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産前産後休業や育児休業を請求したことなどを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない、と定めています。

前述した2014年10月23日の最高裁の判断は、正社員の降格処分についてのものでしたが、非正規の雇止めについては、前例がありません。現在、働く女性の約55%が非正規です。ただ、非正規の方で、妊娠しても、ほとんどの場合、正社員と同じように、産休や育休をとれる状況ではないと思います。たしかに、妊娠出産だけでも大変なことなのに、さらにマタハラと闘うことは困難かもしれません。しかし、妊娠しても安心して働ける社会に向けて、おかしなことに、一人ひとりが立ち上がる必要があると感じています。

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