城北法律事務所 ニュースNo.93 2026初秋号

目次

法改正

養育費の支払いを求めやすくなる新しい制度ができました

弁護士 大八木 葉子
弁護士 田中  淳

離婚後の子の養育費について、これまでよりも支払確保を容易にするルールが2026年4月1日より施行されました。主な3つのポイントを解説します。

1 合意の実効性の向上

─取決めがあれば速やかに差押え可能に─

従来:相手の預金口座などを差し押さえるには、家庭裁判所の手続を経るか、相手と予め公正証書を作成するなどして「債務名義」と呼ばれる公的な書面を得ておく必要がありました。
改正後:「債務名義」がない場合でも、当事者間での養育費の取決めに基づいて、差押えの手続を執行裁判所に申し立てることができるようになります。
〇差押えの上限額:子一人あたり月額8万円
※改正法施行前(2026年3月31日以前)に取決めをしていたケースでは、施行後に発生する養育費に限って認められます。

2 法定養育費

─養育費の取決めがなくても暫定請求が可能に─

従来:当事者間での協議や家庭裁判所の手続により養育費の具体的な金額を取り決めなければ、養育費を請求することができませんでした。相手と関わりたくないなどの理由で、養育費の取決めができていない母子世帯・父子世帯は約半分に上ると言われていました。
改正後:離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続き子の監護を主として行う親は、他方に対して、離婚日以降、子一人あたり毎月2万円の養育費を暫定的に請求することができるようになります。また、この暫定的な養育費が支払われない場合も、差押えを申し立てられます。
※改正法施行後に離婚したケースに適用されます。
※法定養育費はあくまで「暫定」の救済措置です。子の健全な成長のためには、個別の事情に応じた「適正額」を定め直すことが重要です。

3 裁判手続きの利便性向上

─財産や収入の開示、手続きの一本化─

従来:養育費は両親の各自の収入を基礎として算定するので、双方の源泉徴収票等を見せ合う必要がありますが、相手が協力せず、適正な養育費が計算できないケースがありました。また、養育費の差し押さえの申立てとは別に、財産を調べるための手続きをする必要もありました。
改正後:養育費請求の申立てを受けた家庭裁判所が、必要性が認められるときは、当事者に対して収入・資産情報の開示を命じることができるようになります。加えて、養育費を請求するための差し押さえの手続においては、地方裁判所に対する1回の申立てで財産の開示、給与情報の提供、判明した給与の差し押さえに関する手続きをまとめてすることができるようになります。
※これらの手続きは、改正法施行前に離婚したケースでも原則として利用できます(ワンストップ執行手続)。

4 おわりに

─養育費は親の法的義務です─

養育費の継続的な支払率はわずか28%にとどまります。しかし、養育費の支払いは子を健全に成長させるための親の重大な責任です。今回の改正でも、その義務が法律上明確に規定されました。
今回の法改正により、養育費の不払いに悩む方々が泣き寝入りせざるを得ない状況は大きく改善されます。「裁判手続をするのは大変そう」、「相手がどこに勤めているか分からない」、「取り決めた養育費の支払いが止まっている」、「養育費について話し合いを拒否されている」とお悩みの方も、まずは一度、当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。