城北法律事務所 ニュースNo.93 2026初秋号
目次
事件報告
生活保護費減額を違法とする最高裁判所判決のその後
弁護士 木下 浩一
1 最高裁判決のおさらい
2025年6月27日、最高裁判所は、2013年から3年間にわたり行われた史上最大の生活保護基準引下げについて(以下「本件引下げ」といいます。)、主要な理由とされた「デフレ調整」に係る厚生労働大臣の判断の過程・手続に過誤、欠落があるとして違法と断じ、減額処分を取り消す画期的判決を言い渡しました(詳細は2025年夏号でご報告しました。)。本件引下げをめぐっては、全国29の地方裁判所に31訴訟が提起され、原告は延べ1000名を超えています。今回の最高裁判決は、大阪訴訟・愛知訴訟に関するものですが、私が弁護団の一員として関わっている通称「はっさく訴訟」も、2022年6月の東京地裁判決、2025年3月の東京高裁判決といずれも勝訴しており、近く最高裁に係属する見込みです。
2 最高裁判決後の国の不誠実な対応と分断
ところが、その後の国の対応は、到底誠実といえるものではありません。厚労省は判決後に設置した「専門委員会」の報告書を踏まえ、同年11月、対応策を公表しました。その内容は、違法とされたデフレ調整(▲4.78%)に代えて新たな水準調整(▲2.49%)による「再減額」を行い、その差額のみを追加給付するというもので、本来の補償額を約半分に値切るものでした(原告に限り、再減額分を「特別給付金」で穴埋めするとされます。)。
この対応策に対しては、判決が採用しなかった理由の蒸し返しであり紛争の一回的解決の要請に反する、原告か否かで補償額に差を設けることは無差別平等原則に反する等の様々な問題があり、日弁連・東京弁護士会の各会長声明、1300名を超える弁護士共同声明、123名の研究者声明など、法律家からの批判も相次いでいます。何より、最高裁判決の趣旨を行政が事後的に骨抜きにすることは、三権分立を揺るがすものです。
さらに厚労省は、本年2月の局長通知で、訴訟係属中の原告には判決確定まで追加給付をしない方針を突如示しました。長年闘ってきた原告への給付が、原告でない利用者よりも後回しになるという、著しく正義に反する取扱いです。
3 第2ラウンドの闘いを含む今後の取組み
最初の提訴から12年。全国の原告1000名超のうち2割以上の方が既に亡くなり、最高裁判決後も訃報が続いています。はっさく訴訟の原告についても、約30名のうち既に6名の方が亡くなっているところです。最高裁に対しては原告勝訴事件の速やかな上告不受理決定を、厚労省に対しては訴訟係属中原告への即時追加給付、漏れのない追加給付、真摯な謝罪と再発防止策(違法な基準改定に至る経過の調査・解明、生活保護基準部会への当事者参加、権利性の明確な「生活保障法」の制定等)等を今後も強く求めていきます。
また、追加給付は本年3月以降、各自治体で順次始まっていますが、値切られた追加給付決定に対し、全国で審査請求を行う運動も始まっています。
引き続きご支援をお願い致します。

