城北法律事務所 ニュースNo.93 2026初秋号
目次
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法律相談
労働事件によくある勘違い
1 残業代は3年過ぎたら請求できない?
2 固定残業代制度があるから残業代は支払わなくてよい?
弁護士 前田 将希
1 残業代の消滅時効
(1) 3年の期間制限
未払残業代の請求はいつまでもできるわけではありません。残業代請求権は3年で消滅時効にかかります(※本原稿執筆時点)。
例えば、10年にわたり残業代が未払いであっても、原則として3年前より以前の7年分は時効により会社から支払われません。
しかし、よくある勘違いは3年を過ぎたら絶対に諦めなければならないというものです。実際には3年を過ぎていても、払われる場合があります。
(2) 時効消滅分の残業代を一部回収した事例
すなわち、会社側にも、「主力社員だし機嫌を損ねて辞められては困る」、「大企業であり世間体が気になる」などいろいろな内部事情があります。そうした場合、消滅時効期間が過ぎている未払残業代についても払ってもらえる場合があります。
実際に、弊所弁護士担当事案でも、消滅時効にかかった残業代について、粘り強く交渉した結果、一部回収に成功した事例があります。
2 違法な固定残業代制度
(1) 固定残業代制度とは
使用者の立場で極めて注意が必要なのが、固定残業代制度の運用です。
固定残業代制度とは、実際に残業したかにかかわらず一定時間分の残業代を毎月支払う制度です。ここで、「事前に残業代を決めているのだから、何時間残業させても追加の残業代は発生しない」というのが使用者・労働者の双方に非常に多く見受けられる誤解です。設定された時間を超える残業をさせた場合、超過分の残業代は追加で支払わなければなりません。例えば、「固定残業代3万円(20時間まで)」という設定の場合、残業20時間までは実際の残業の有無にかかわらず3万円が支払われることとなり、20時間を超えた場合は超過時間について通常通り残業代を計算して支払われねばなりません。固定残業代制度は決して使用者に有利な制度ではないのです。
(2) 違法な固定残業代制度
恐ろしいのが、「曖昧な表記」による違法リスクです。固定残業代制度が認められるには「基本給と明確に区別されること」、「客観的に固定残業代だと明らかな表記であること」等の厳格なルールがあります。「月給●●万円(固定残業代を含む)」や「●●万円(手当として)」といった不明確な表記は違法です。また、固定残業代を差し引いた基本給が最低賃金を割っている場合も違法です。
こういった場合、会社側はペナルティとして、「残業代を一切払っていない」と判断されるだけでなく、固定残業代として支払っていたつもりの金額が基本給に合算されてしまうのです。結果として、その膨れ上がった基本給をベースに再計算された残業代について、固定残額支給分は差し引かれず、全て支払わなければならなくなります。
3 最後に
弊所では、適正な労働環境を実現するため、労働者、使用者側の区別なく、労働相談を受け付けております。小さいと思われている問題でも、弁護士が蓋を開ければ、重大問題であり早めの対処が肝心というような問題が幾つも存在します。少しでも迷われましたら、ぜひ、ご相談ください。

