城北法律事務所 ニュースNo.93 2026初秋号
目次
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憲法特集2026 鼎談
迫りくる改憲
改憲を阻止するために、私たちに何ができるか…!
弁護士 田場 暁生 / 弁護士 加藤 幸 / 弁護士 久保木 太一
【久保木】今回の対談メンバーは、56期の田場暁生弁護士、60期の加藤幸弁護士、そして69期の私(久保木太一弁護士)の3名です。修習期がバラバラな3人ですが、ある共通点があります。それは、城北法律事務所内の憲法委員会に所属しているということです。憲法委員会は、月に1回程度会議をし、外部向けの講演会の企画などをする所内委員会です。今年4月には、靖国神社ツアーを実施しました。
【加藤】これは珍しく内輪の企画で、所員とその家族だけで、花見も兼ねて実施したんですよね。私も久保木さんも子供を連れて参加しました。今日の対談にはいませんが、憲法委員会には、靖国神社公式参拝違憲訴訟の弁護団をやっていた大山勇一弁護士(53期)がいます。大山さんは、外部向けの靖国神社ツアーのアテンドもしているのですが、今回の内輪企画でもガイド役をやってもらいました。
【久保木】大山さんはかなり詳しかったですね。とても勉強になりました。田場さんは、今回の靖国神社ツアーで何か印象的だったことはありますか。
【田場】私は靖国神社には何度も行っていますが、靖国神社に併設されている軍事史博物館である遊就館では、アジア・太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼称し、日本の侵略戦争を正当化する内容を展示しています。日本に侵略され、植民地化されたアジアの人たちはこのような展示をどう思うか、今回もそこに思いが至りました。
【加藤】いわゆる「靖国史観」ですね。日本軍に主体性はなく、中国の抗日(反日)勢力などに追い込まれて行動しただけという「受け身史観」です。
【田場】高市早苗首相も「靖国史観」の持ち主です。高市氏は首相になる前には靖国神社への公式参拝も行っていますし、さらに過去には「朝まで生テレビ」で、アジア・太平洋戦争は日本の侵略戦争ではないと述べ、司会の田原総一郎氏から強く非難されたことがありました。こうした特異な歴史観を持つ政治家が、あろうことか今の首相です。
【久保木】そうした歴史観とも関係するのだと思いますが、高市首相は、今年2月の施政方針演説では、改憲について「国会における発議が早期に実現されることを期待する」と述べ、改憲に邁進するスタンスを示しています。具体的な改憲項目としては、今年5月の産経新聞へのインタビューで、参議院の合区解消と緊急事態条項を先行させるとしています。加藤さん、この点はどうですか。
【加藤】参議院の合区解消は、「一票の格差」の違憲判決が続出する中で、格差解消のために選挙制度を改めるのでなく、憲法の方を変えて裁判所を黙らせてしまおうという完全に逆立ちした議論です。
【久保木】憲法学者からは「違憲の改憲」という指摘もされていますね。合区解消改憲自体が、現行の憲法14条(法の下の平等)、さらには憲法43条(全国民の代表である国会議員)に反しているという指摘です。
【田場】「憲法は国家権力を制限するものである」という立憲主義に否定的で、現行憲法を軽視している高市首相、自民党政権の考えが色濃く出ていますね。
【加藤】また、緊急事態条項については、非常時の議員任期の延長が提案されていますが、立法事実、つまり、「そのような規定が本当に必要なのか」、というところに大きな疑問があります。私は今年の3月まで、二弁(第二東京弁護士会)の副会長を務めていましたが、二弁では、緊急事態における国会議員の任期延長その他の緊急事態条項の創設に反対する声明を発出しています。緊急事態条項の創設については、日弁連や他の弁護士会も反対する声明を出しています。
コロナ禍でも世界中で選挙は行われていました。東日本大震災の際には、地方選挙が一部延期になりましたが、それは震災の被害を直接受けたというよりは、マンパワー不足が主たる理由です。さらに、万が一衆議院選挙が行えないことがあったとしても、憲法には参議院の緊急集会の制度が用意されています(54条)。
【田場】立法事実がない中で懸念されるのは、濫用の危険です。1941年、日中戦争下の日本において、法律によって衆院議員の任期が1年延長されました。その後に起きたことは、真珠湾攻撃による日米開戦です。任期延長改憲は、時の政権によって恣意的に用いられ、戦争遂行のための手段として用いられる危険性があるものです。
【久保木】自民党は、緊急事態条項として、議員任期の延長と併せて、非常時の人権制限を可能とする緊急政令制度の新設も求めています。この点にも十分な注意が必要です。また、合区解消と緊急事態条項はあくまでも「先行」されるとしていて、改憲勢力が狙っているのは、憲法9条(平和主義)の改訂であるということも忘れてはなりません。
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最後に、高市首相の改憲を阻止するために、私たちに何ができるかについて、考えましょうか
【加藤】運動の焦点は、憲法審査会に条文起草機関を作らせないことにあると思います。改憲勢力が伸長した2026年の衆議院選挙の影響で、衆議院の憲法審査会は、10人中9人の幹事が改憲派といういびつな状況にあり、今までにない強引な議事運営で改憲に突き進んでいます。その改憲派が一致して求めているのが条文起草機関の設置です。裏を返せば、この条文起草機関さえ作らせなければ、改憲は実現しないということになります。
【久保木】私が事務局を務めている九条の会も呼びかけ団体となっている「憲法9条改悪に反対する請願署名」(9条署名)でも、「衆参の憲法審査会に改憲案の起草委員会を設置しないこと」が請願事項となっています。この署名を集めることが、私たちにできることの一つでしょう。
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私たちがすべきことについて、田場さんはどうでしょうか。
【田場】今の日本の情勢を、日本だけでなく、世界全体の流れとして捉えることが重要だと思います。
アメリカではドナルド・トランプが再選してから、移民排除・排外主義的な思考がより一層広まりつつあります。ロシアのウクライナ侵攻も、ガザの虐殺も終わりが見えない中、アメリカがイランを攻撃し、戦争の火の粉が世界中に拡大しています。不安定な世界情勢の背後には格差の拡大などからくる「憎悪と不安」があり、そうした負の感情がSNS上で拡散され、人々の心を蝕んでいます。
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センセーショナルな情報に踊らされず、正しい情報に基づき冷静な判断をすること。まずはそれが一人一人に求められているのではないでしょうか。

