城北法律事務所 ニュースNo.93 2026初秋号

目次

臨時コールセンター

地代・賃料増額の広がりと「値上げ110番」の取組み

弁護士 結城  祐
弁護士 寺澤 純香

近年、土地地代や建物賃料の値上げに関する相談が増えています。貸主から、「固定資産税が上がった」「周辺の相場が上がっている」「物価が高騰している」といった理由で、地代や賃料の増額を求められるケースが目立つようになりました。
実際のところ、東京23区をはじめとする都市部を中心に、再開発やインバウンド需要の回復などにより、地価の上昇が続いています。また、食料品やエネルギー価格をはじめとした物価上昇が続いているのも事実です。
借地借家法では、租税その他の負担の増減、土地・建物価格の変動、経済事情の変化、近隣の同種の地代・賃料との比較などを理由として、将来に向かって賃料の増減額請求をすることができるとされています。そのため、地価上昇や物価高騰は、法的にも増額請求の根拠として主張されやすい事情といえます。

もっとも、地価や物価が上昇しているからといって、貸主の主張する新賃料への増額がただちに認められるとは限りません。実際には、契約締結からの経過、これまでの賃料改定の状況、近隣相場との比較、固定資産税など公租公課の増減、建物の利用状況など、様々な事情を総合的に考慮して判断されます。貸主と借主の間で新賃料が折り合わない場合には、適切な賃料を裁判所の調停や裁判で決めることになります。そのため、貸主から一方的に増額通知が届いたとしても、直ちにその内容を受け入れなければならないわけではなく、まずは通知内容やその根拠をよく検討することが重要です。

このような状況の中、弊所の弁護士も参加している東京借地借家人組合連合会では、弊所に臨時のコールセンターを置き、「値上げ110番」を継続的に実施し、借地人・借家人の皆様から広く相談を受け付けています。
直近では3回実施しており、第1回は数時間の間に約30件の相談が寄せられ、その多くが賃料値上げに関する相談でした。第2回では、受付体制を拡充して実施したところ、2日間で約80件の相談が寄せられ、値上げに関する相談も大きく増加しました。さらに、第3回では1日で60件以上の相談が寄せられ、その半数程度が賃料値上げに関する相談でした。弊所での「値上げ110番」の活動はNHKでも取り上げられています。
相談内容としては、「突然、大幅な値上げを通知された」「値上げに応じなければ契約更新が難しいと言われた」「長年住み続けているが、これ以上の負担は難しい」といった切実なものです。相談件数や内容からも、地代・賃料の値上げが、借地人・借家人にとって身近で深刻な問題となっていることがうかがえます。

地価や物価の上昇を背景として、今後も地代・賃料の増額請求は一定数続くことが予想されます。増額請求を受けた場合には、一人で悩まず、その内容や根拠を十分に確認し、必要に応じて専門家へ相談することが大切です。